乳酸菌
【連載:乳酸菌の話(4)】腸内細菌について
1)常在菌(腸内細菌)
常在菌とは、健康な人の身体に日常的に存在する微生物(細菌)のこと。人の場合、腸内に最も多く存在し、他には口腔内、皮膚表面などに棲息しており、様々な作用をもたらしています。
人の身体にいる常在菌は、
・皮膚:1兆個以上が棲息
・最も多い腸の中
種類:大腸菌・腸球菌・ビフィズス菌・乳酸菌など数百種類
数量:100~1000兆個が棲息
総重量:約1.5Kg
人の身体はおよそ60兆個の細胞でできているので、いかに沢山の菌と共生しているかがわかります。
2)常在菌はどこから来るの?
赤ちゃんは、産道を通る時、お母さんの粘液に包まれ重要な菌をたくさん獲得するのです。お母さんの粘液1ccに100万個の菌がいるそうです。
1.お母さんのお腹から出たら菌を吸い込み、口、鼻、肺と入り、肺の免疫ができます。
2.オッパイをあげる
口から喉、食道、胃、腸、肛門、膣、尿道の末端へと移っていき免疫が出来上がります。
この微生物(常在菌)が母乳を分解して乳酸菌となり、栄養の仲介者になります。
そして、常在菌が腸内細菌となり、腸内細菌叢(腸内フローラ)が出来ます。
★腸内フローラは3歳でプロになる。
お母さんの菌は早い菌で1日、遅い菌は7日で赤ちゃんに住みつき、ほとんどの菌は、3〜4日で住みつくそうです。東南アジアのある地域では、赤ちゃんが生まれると4日間ほど、そのまま過ごすそうです。ちょうど、ほとんどの菌が住みつく日数です。
★常在菌は常に一定の方向に動いていて、この動きが止まると体は臭くなります。
菌は、立っている時 ⇒ 体の前面は下から上へ(足下から頭へ)、体の背面は上から下へ(頭からかかとへ)と動いています。 これは、人間が四足歩行をしていた時のなごり。
体の背面は、猫や犬の背中の毛並みと同じに動いています。この流れが壊れると、体に影響が出て、力が入らなくなります。
◆動物だけでなく、植物にも常在菌がついている
植物も動物を同じく常在菌で覆われています。同じように常在菌がたくさんついているのは健康、そして新鮮な証拠です。
3)善玉菌・悪玉菌・日和見菌について
善玉菌について
善玉菌は、健康維持や生命活動に必要な物質を産生します。
善玉菌の主なエネルギーは、糖類や食物繊維を発酵させることです。
具体的な種類:乳酸菌などの乳酸を作り出す菌、ビフィズス菌などのように酪酸や酢酸を作り出す菌、さらに納豆菌、酵母菌、麹菌等
善玉菌による働き:
- 悪玉菌の腐敗進行やその繁殖を抑制する
- 腸内を常に酸性に保つ
- 脂質代謝を促す
- 病原菌を撃退、感染防御機能を有する
- 食中毒を予防する
- 発がん性物質を分解する
- 免疫を活性化させる
- 食べ物の消化を促進し、栄養分の吸収力を高める
- 腸の蠕動運動を活発にし、便秘を予防する
- ビタミンやホルモンの生産
悪玉菌について
悪玉菌は、大腸と直腸に生息し、腸内に腐敗物を溜め込む腸内細菌の中で、身体の健康を害する菌です。
一方、善玉菌は悪玉菌と戦うことで、善玉菌の効果を発揮する面もあり必要な存在でもあります。
具体的な種類:ブドウ菌、ウェルシュ菌、大腸菌(有毒株)など
悪玉菌による働き:
悪玉菌は腸内で有害物質を作り、腸壁の細胞を長い年月をかけて傷つける
- がんを引き起こしたり、肝臓を弱らせたりする
- 生活習慣病や老化につながる
- 腸内をアルカリ性にし、免疫機能を下げる
- 悪玉菌が優位に立つと、おならが臭くなったり便秘が起きる
- 長い期間、悪玉菌が優勢だと身体全体に様々な不調が生じる
日和見菌について
日和見菌は、善玉菌と悪玉菌のバランスが不安定になった時、善玉菌と悪玉菌のうち、優勢なほうと同じような働きをする性質があります。
具体的な種類:バクテロイデス、大腸菌(無毒株)、連鎖球菌
4)悪玉菌が増える原因
生まれたての赤ちゃんの腸は、99%以上が善玉菌に占められています。しかし、生後3日目から善玉菌量が徐々に減少。その後、加齢による免疫機能の低下や摂取する食品の影響を受けて悪玉菌が増えていきます。
悪玉菌が増加する要因
(例1)肉類。
消化の悪い肉類は腸で腐敗便となり、悪玉菌の餌となる。
悪玉菌は肉類のタンパク質やアミノ酸を餌に生育し、有毒物質を放出。
その結果、下痢や便秘といった症状を引き起こします。
(対策)食物繊維を多く摂り善玉菌量を増やしましょう。
食物繊維は腸内の腐敗物を吸収し、善玉菌の働きを高めます。よって、食物繊維を多く摂取して善玉菌を増加、善玉菌優勢の腸内環境を形成する必要があります。
善玉菌の一種である乳酸菌やビフィズス菌を含む食品や食物繊維の豊富な野菜などを日頃の食生活に取り入れ、善玉菌量を増やしていくことが大切です。
特に、肉中心の偏った食生活をしている方は、腸内が悪玉菌優勢になっている可能性が大きいといえるので要注意です。
(例2)ストレス
ストレスを溜め込むと自律神経に影響が及びます。すると胃酸の分泌が抑制され、胃は従来の働きができなくなり、消化不良を起こします。その結果、腸に腐敗物が蓄積され、悪玉菌の増殖を促してしまいます。
(対策)定期的にストレスを発散しましょう。
精神面の健康は腸内の健康にも繋がります。 悪玉菌の増殖を抑えるためにも趣味やスポーツ、リクゼーションなどを利用して、定期的なストレス発散を心掛けることが大切です。
5)腸内が悪玉菌優勢になった場合の症状
以下の症状は、腸内が悪玉菌優勢になっている証拠。放っておけば身体に様々な不調が生じることになるので、善玉菌優勢の腸内環境を作ることを心がけましょう。
- 便やオナラが臭う
腸内に悪玉菌が増えると、食べ物のタンパク質やアミノ酸からアンモニアや硫化水素といった便やオナラの刺激臭の原因となる有毒物質が作り出されます。 - 腹部の張りや腹痛
悪玉菌の作り出す有毒物質は、腸の活動を抑制します。その結果、腸内に便やオナラが溜まって腹部が張り、その刺激で腹痛が起こります。 - 肌荒れや体臭、口臭
悪玉菌によって作り出された有毒物質は大腸粘膜の血管に吸収され、血液を通して全身に充満していきます。皮膚に運ばれた有毒物質は肌にダメージを与え、ターンオーバーを抑制します。結果、ニキビや吹き出物といった肌荒れが起こります。 また、有毒物質が全身に充満すると、その腐敗臭が毛穴から漏れてしまいます。体臭や口臭に異変を感じたら、腸内に悪玉菌が増殖している証拠です。 - 倦怠感や疲労、風邪などの感染症
腸内が悪玉菌優勢になると、作り出された有毒物質によって身体の各免疫機能が低下します。その結果、全身に倦怠感や疲労を感じたり、風邪や食中毒や口内炎、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。
6)加齢による腸内細菌の変化
腸内の細菌群は、年齢とともに変化します。年を重ねると悪玉菌の割合が増えていくことがわかります。
母体内で胎児は無菌に保たれています。
生後、母乳を飲むことにより、善玉菌であるビフィズス菌は母乳中の乳糖やオリゴ糖を栄養源として急激に増殖し始めます。赤ちゃんの便が黄色っぽく臭くないのはビフィズス菌優位の腸内環境になっているからです。
離乳期以降、離乳食を食べ始めると、徐々に大人の菌叢(きんそう)へと変化していきます。
その後、年齢を積むにつれ、善玉菌であるビフィズス菌は減少しウエルシュ菌などの悪玉菌が増加する傾向にあります。
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